「ありのままの農村はアトラクション!」若者を呼び込む「民泊」という打ち手【栃木県小山市】

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昨今、「民泊」という言葉を聞く機会が多くなった。ホテルや旅館ではなく、住宅として建てられた建物に泊まる民泊は、安価で手軽に宿泊ができること等から、若い世代から人気がある。また、空き家問題を解決する打ち手の一つとしても注目されている。


栃木県小山(おやま)にも民泊施設「まなかのいえ」が2020年7月にオープンした。「まなかのいえ」を運営するのは村山大樹さんと妻である村山史織さん。夫の大樹さんは当時小山市の地域おこし協力隊として活動をしており、任期中に「まなかのいえ」をオープンさせた。その後、合同会社ダイバーステイをたちあげ、民泊事業を中心に事業運営をしている。


「まなかのいえ」がある間中(まなか)地区は、小山市の中でもどちらかと言えば「田舎」で、まわりは田んぼばかり。しかし、「まなかのいえ」は大学生や20代前半の若い層の利用者が多く、人気の民泊施設になっている。なぜ、農村で事業を展開しようと思ったのか、なぜ若者に人気なのか、疑問に思った筆者は大樹さんにインタビューを実施し、その理由に迫った。

■なぜ地域おこし協力隊?なぜ小山市? 

大樹さんは、2019年1月に小山市の地域おこし協力隊として着任した。協力隊になる前は、埼玉県の不動産会社で営業をしていた大樹さん。営業職として従事しながらも、いずれ地方での起業をしたい、という思いを持っていた。その中で、地域おこし協力隊の制度を知り、「これだ!!」と思い、決意したという。

小山市を選んだ理由は様々なことが重なったようだが、その当時、妻である史織さんの職場も埼玉県内であり、現実的に通える場所かつお互いの実家にさほど遠くないという、立地的な理由が大きいそうだ。


■農泊事業の推進と新型コロナウイルス

大樹さんの地域おこし協力隊としてのミッションは「農泊事業」の推進だった。農村の中に旅行者を呼びこむための農業体験や、農家への民泊などのサポートを主に行っていた。しかし、2020年3月ごろから、新型コロナウイルスの感染が拡大した影響で、農泊推進のためのイベントや体験は、すべて中止になってしまった。そのような状況を受け、個人レベルで動けることを、考えるようになったそうだ。

■地域の課題に対して民泊という打ち手 

「地域のいろいろな人に話を聞くと、みんなそろって空き家と若者に関することを問題としてあげていたんです」

と、大樹さんは語る。空き家を改装して民泊施設を運営すれば、空き家問題の解決につながり、さらに若者をターゲットにすることで、若者が地域に来るきっかけになると考えた。

地域課題に向き合った結果、「民泊を通して地域課題の解決」という打ち手に至った。そして、「まなかのいえ」のオープンに踏み切ったのだ。

■「ありのままの農村」が若者にとってはアトラクション

2020年7月に「まなかのいえ」をオープンし、2つ目の民泊施設となる「まなかの隠れ家」を、2021年12月にオープンした。これらの施設も主に利用するのは、都会の大学生や20代前半の若者だという。なぜ、若者が田舎の民泊施設を使うのだろうか。

「都会の若者にとっては“何もない”が新鮮でありのままの農村がアトラクションなんです」

と、大樹さんが答えてくれた。 

田舎で生まれ育った人たちにとっては驚くことかもしれないが、都会の若者にとっては“何もない”が「逆にいいよね」というとらえ方になるのだ。


大樹さんは今後に関して、

「近隣の事業者とも連携して、宿泊施設に泊まるだけでなく、まちに泊まるイメージを持ってもらえるような仕組みを作りたい」

と話してくれた。民泊施設としての成立だけではなく、「地域」という大きな枠でとらえているようだ。 

地域課題に向き合った結果、始めた民泊の事業は、空き家の利活用に繋がり、若者の来訪にもつながっている。若者を農村へ呼び込む、「ありのままの農村はアトラクション」という考え方には今後も注目したい。

【まなかのいえ】
https://manakanoie.divstay.com/

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國府谷純輝

國府谷純輝

栃木県栃木市

編集部編集記者

第4期ハツレポーター/栃木県茂木町出身。2021年6月より栃木市地域おこし協力隊として栃木市の寺尾地区をメインフィールドに活動している。情報サイト「テラオノサイト」の立ち上げ・運営やYoutubeにてローカルラジオ「ラジロー」を配信するなど情報や魅力発信を行っている。趣味はキャンプとサウナ。